東京地方裁判所 昭和43年(ワ)12293号 判決
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〔判決理由〕次に、原告らは、建築基準法違反の本件建物により日照通風を妨害されたとしてその損害の賠償を求める。
本件建物所在地が建築基準法上の準工業地域でかつ準防火地域に指定されていること、被告三央工業は本件建物を増築するにさきだち、昭和四二年一一月八日付で同法第六条に基づく建築主事の確認を得ているが、その申請及び確認の内容は、申請時の既存建物の建築面積を45.85平方メートルとし、増築部分の建築面積を50.40平方メートルとし、その敷地は幅4.5メートルの公道に接しているとするものであるとして、しかるに、同被告が実際に建築した増築部分の面積は約一〇四平方メートルであつて、本件建物の総建築面積は約一五〇平方メートルとなつたこと、従つて、本件建物とは規模も異なり、かつ、建築面積の敷地要積(162.86平方メートル)に対する割合が建築基準法第五五条に定める制限に抵触する違反建築であることは、当事者間に争いがない。
<証拠>によると、本件建物は、被告三央工業が一階をプラスチック成型加工業を行う工場とし、二階を従業員宿舎とするために、従来(五)の土地上にあつた二階建の建物に増築したもので、ほぼ(三)及び(五)の土地一杯に建てられており、その外壁は最も近いところでは原告春日井及び原告岡田の所有地との境界から約六〇センチメートルの位置にあること、他方原告らも本件通路部分を除いたほぼ所有地一杯に二階建ての住居を建築して居住しているものであるが、そのうち原告春日井の建物はもともと本件通路を隔てて東から南にかけて原告岡田の所有建物、本件増築前における(五)の土地上の二階建建物に接していたので、本件建物の増築の結果、東から西南にかけて隣家に囲まれた形となつてしまい、階下の部屋はほとんど日照を遮られ、通風も悪くなつたこと、しかしその他の原告豊島、同岡田の建物については本件建物増築により若干通風が悪くなつたほかは、日照についてはその位置関係からして全く影響を受けず、また原告春日井の建物も二階部分についてはなお相当程度の日照があることを認めることができ、これに反する証拠はない。
ところで、建築基準法の前記法条は、相隣者間の日照通風に関する直接の保護法規ではないから、被告三央工業が右法条に違反して本件建物を増築したからといつて、直ちにそれが不法行為を構成する違法な行為であると速断することはできない。右違反の事実に加えて、当該場所の地域性、被害の種類程度、加害行為の態様、加害の意図の有無など諸般の事情を考慮し、その建築物による日照通風の妨害が相隣者として受忍すべき限度を越えると認められる場合に、その受忍範囲を越えた限度で、その妨害が違法になるというべきである。
前認定の事実に被告本人尋問の結果を加えて考えると、本件建物は建築基準法の建蔽率に違反しているが、境界からの距離、建物の高さについては法令違反はなく、本件増築もそれなりの必要に基づくものであつて、殊更原告らを害する意図をもつてなされたものではないうえに、原告豊島及び原告岡田にはほとんど被害を生ぜず、原告春日井についても階下に日照通風の妨害が生じても、建物全体からみるならばなお住居として使用するについて著しい弊害はないものと認められるから、本件建物所在地が建築基準法上の純然たる住居地域でなく、しかも狭い土地の集つた一角であつて、原告春日井に現に存している日照通風の悪さは必ずしも本件建物の増築によつてのみ生じたものとはいえないことを考え合わせると、本件増築によつて原告らが日照通風を妨害されたことによる不利益はいまだ社会生活上原告らの受忍すべき限度を越えるものではないと判断される。(田中永司 堀口武彦 小林亘)